著書の紹介 

谷口研語         美濃・土岐一族

  「美濃・土岐一族」

  法政大学講師   谷口研語 著



   新人物往来社刊  定価 3,000円

   はしがきより抜粋

  美濃(岐阜県)の東南部に、木曽川の南を平行して流れる土岐川という川がある。
木曽川にくらべれば、小さな流れである。
この川は、とちゅう、瑞浪・土岐・多治見の盆地や河岸段丘をきざみつつ古虎渓の山なみをぬって
尾張(愛知県)へと入り、庄内川となって伊勢湾にそそぐ。

名古屋からJRの中央線にのると濃尾平野がつきるあたりから、列車はこの流れをさかのぼってはしり、
古虎渓の山なみをぬけると多治見の盆地がひらける。
なお、列車はしばらく土岐川にそってはしるが、じょじょに流れは小さくなり、
やがて、武並というひなびた駅の直前で右方の山のなかへと消えてゆく。
 
この土岐川の流域がかつての土岐郡である。

 この土岐郡内へ、いまから八百数十年前、源頼光の子孫の一人光衡が土着して、
土岐の地名を名字に名のった。美濃源氏の名門土岐一族の誕生であった。

 以後、土岐一族は美濃を基盤に発展していったが、とくに、南北朝動乱のはじめ、
四代頼貞が美濃守護となってからは、土岐氏歴代が美濃守護を継承して戦国時代にいたった。

そのため、美濃の中世史は、土岐一族をぬきにしては語れない。そればかりか、
南北朝時代のある期間、三代守護の頼康は、美濃のみではなく、
尾張・伊勢(三重県)の三か国守護を兼務した。

そのため、東海地方三か国の中世史にとっても、土岐一族は欠かせない存在となっている。
その間、土岐一族はそれぞれに拠った地の地名を名字に冠し、
あたらしい家をおこしながら、濃尾平野一帯に分派していった。

分出した一族は百余家を数え、そのうち半数くらいは、確実に中世の史料で存在が確認できる。
 それらの家々は、明智氏・池田氏・揖斐氏など、あたらしい名字を名のりながらも、
土岐明智氏・土岐池田氏・土岐揖斐氏というように、土岐の名字をすてることはなかった。

それは、土岐一族として共通の基盤をもっていたこと、そして、
それが社会的にも認知されていたことを示している。

 土岐氏のばあい、その成長、発展には、
一族の結束によるところが大きかったものと考えることができるだろう。

中世という時代は、さまざまなレベルの集団が、集団としての自立性・自律性をもっていた。
そのような自立した集団のなかでも、
ふるくから人間社会の基本となっていた集団こそ、親族(血族・同族・一族)であった。

したがって、一族の結束が重要な意味をもったという点は、
中世前期のどの武士団にも同様にいえるのだが、土岐氏は特にその傾向が強く、
分出した名字の数の多さは稀有の例であるといえる。




「美濃・土岐一族」

 ■ 目 次

第一部  土岐一族の歴史
はじめに
第一章   美濃守護への道
第二章   美濃守護土岐氏の誕生
第三章   三代守護頼康の強勢
第四章   土岐康行の乱
第五章   主流の交替と土岐一族
第六章   土岐守護家の没落
おわりに

第二部  土岐氏の一族庶流
はじめに
                             名字ごとの詳細な解説がされています 
あ〜い
     饗庭氏  相原氏  明智氏  明智光秀の出自と明智一族  浅野氏  蘆敷氏  麻生氏  荒川氏  
     池尻氏  池田(西池田)氏  石谷氏  市原(一原)氏  一色氏  稲木氏  乾氏  井口氏 
     揖斐氏  今峰氏
う〜お
     植村氏  牛牧氏  宇田氏  宇都(宇津)氏  梅戸氏  衣斐氏  大井氏  大桑(大鍬)氏  
     大島氏  大須氏  大竹(大宅)氏  大西氏  隠岐氏  奥田氏  表佐(表作)氏  落合氏 
     乙部氏  小里(尾里)氏  下石氏
か〜こ
     柿田氏  笠毛氏  金森氏  金山氏  萱津氏  北方氏  桐原氏  木和田氏  久々利氏
     郡家氏  久尻氏  気良氏  小宇津氏  神戸(郡戸)氏  小柿氏  御器所氏  小島氏
     小弾正氏
さ〜そ
     西郷氏  坂氏  佐良木氏  猿子氏  志多見氏  芝居氏  島氏  島田氏  陶器(陶江)氏
     菅沼氏  墨俣氏  須原(洲原)氏  瀬田氏  仙石氏  曽我部(曽我屋)氏  曽代氏
た〜の
     高田氏  高松氏  高山氏  多治見氏  田中氏  田原氏  月海氏  土居(土井)氏 
     妻木氏  遠山氏  徳山氏  外山氏  長沢氏  長瀬氏  長森氏  長山氏  西池田氏
     西脇氏  則松氏
は〜ほ
     萩原氏  羽崎氏  蜂屋氏  浜氏  東池田氏  肥田(飛騨)氏  肥田瀬氏  深坂氏
     深沢氏  福光氏  藤田氏  船木(舟木)氏  穂保氏  堀内氏  本庄氏
ま〜わ
     槇野氏  丸毛氏  満喜(万木)氏  溝尾氏  三田氏  三栗(美作)氏  三宅氏  武藤氏
     村山氏  屋井(八居)氏  山尻氏  山本氏  吉田氏  世保氏  六ノ井氏  鷲巣氏 
     和田氏
おわりに

付論  長享の将軍親征と美濃守護土岐氏
はじめに
一、義尚政権と成頼・政房・妙椿
二、近江の土岐三奉行と斉藤利藤
三、土岐三奉行の立場
おわりに

あとがき
  


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